これまでGemini Canvas、v0、開発ツール3つの比較と、同じ課題を各AIに投げて実機検証してきました。
今回はFigma Makeです。デザインツールの本家Figmaが作ったAIアプリビルダー——ここには他と違う問いが立ちます。
デザイン会社のAIは、エンジニア系のAIより「きれいな」ものを作るのか?
結論から言うと、答えはYES。ただし、いちばん遅い。 その中身を実機の記録で書きます。
検証は2026年8月、編集部が実機で実施。Figmaにログインした状態で、これまでの検証とまったく同じ指示文を使っています。AIの出力は日々変わるため、細部は時期・モデルにより異なります。
投げた指示(他ツールと共通)
シンプルな割り勘計算アプリを作って。合計金額と人数を入力すると1人あたりの金額が計算される。端数(割り切れない分)を誰か1人が多めに払う設定も選べるようにして。日本語UI、スマホでも使いやすいレイアウト、やさしい配色で。
割り勘は「1万円を3人で割ると割り切れない」ため、端数処理と計算の正確さが一発で分かる題材です。
入口:figma.com/make に入力欄がある
Figma Makeのページを開くと、いきなり「何を作りたいですか?」という入力欄が出ます。例として並んでいるのは 「オンボーディングフロー」「データダッシュボード」「グラデーションギャラリー」——この時点で、明確にUI・デザイン寄りの製品だと分かります。
指示を送ると、ファイル名が自動で「割り勘計算アプリ」になり、生成が始まりました。
⏱ 所要時間は約7分。今回いちばん遅い
生成中の表示が独特でした。
- 「考え中…」+レイアウト骨格のスケルトン(点線の四角が並ぶ)
- 「詳細を詰める」フェーズへ
- 完成
まるでデザインの工程をなぞるような段階表示です。ただし時間はかかりました。
| ツール | 完成までの時間 |
|---|---|
| v0 | 約1分49秒 |
| Google AI Studio | 132秒(※4回目で成功) |
| Figma Make | 約7分 |
| ChatGPTサイト | 7分31秒 |
ChatGPTサイトと並ぶ最遅クラス。v0の約4倍です。「デザインまで作り込むぶん遅い」と考えれば納得はできますが、待たされるのは事実です。
🎨 デザイン:ここが明確に違った
出てきたものを見て、正直「あ、違うな」と思いました。理由は3つです。
① iPhoneのモックアップの中に表示される
他の5ツールはすべてブラウザ幅のプレビューでした。Figma Makeだけが、デバイスのモックアップに収めて見せてきます。「スマホで使いやすく」と指示したものを、スマホの枠で確認させる——デザインツールらしい振る舞いです。
② 日本語の書体を自分で選んでいる
AIの説明にこう書かれていました。
Noto Sans JP でくっきり読みやすい日本語
日本語タイポグラフィに言及したツールは、6つの中でFigmaだけでした。他は「日本語UI」を満たしはしても、書体まで踏み込んだ説明はしていません。
③ 情報に「主従」をつけている
これがいちばん効いていました。計算結果の見せ方がこうです。
- 「基本の1人あたり」→ 緑・特大
- 「端数を負担する1人」→ オレンジ・小さめ
他ツールは、2つの金額を横並びで同格に並べていました。Figmaだけが「利用者がまず知りたいのはどっちか」を決めて設計しています。しかも端数を負担する人だけオレンジのアクセント色で、一目で「自分は多い方か」が分かる。
これは配色の good/bad ではなく、情報設計のレベルが一段違うという話です。
⚙️ 機能:気の利いた作り込みが多い
- 人数のクイック選択ボタン(2人〜6人) — 他ツールにはありませんでした。飲み会の人数なんて大体その範囲、という現実的な割り切り
- 端数処理3モード — 「1人多めに払う/1人少なめに払う/端数なし(小数あり)」
- 「全員の内訳を見る」で展開 — 1人目に「端数負担」バッジ付きで金額を表示
- リセットボタン
✅ 計算:3モードすべて正確。しかも「合計」を自分で出す
公開したアプリで、1万円÷3人を実際に入力しました。
「1人多めに払う」
- 基本の1人あたり ¥3,333/端数を負担する1人 ¥3,334
- 内訳:¥3,334 + ¥3,333 + ¥3,333 = ¥10,000 ✓
「1人少なめに払う」
- 基本の1人あたり ¥3,334/端数を負担する1人 ¥3,332
- 内訳:¥3,332 + ¥3,334 + ¥3,334 = ¥10,000 ✓
「端数なし」
- ¥3333.33 と小数表示に切り替わる ✓
そして特筆したいのが、内訳の最後に「合計 ¥10,000」の行が出ることです。
これは検証した6ツールでFigmaだけでした。他はどれも1人あたりの金額を出して終わりです。利用者が自分で検算できるように、合計を見せる——ここまで気が回っているのは、正直かなり丁寧だと思いました。
中身のコード:本格的なViteプロジェクト
コードビュー(<>)を開くと、単一のHTMLではなく複数ファイルのプロジェクトでした。
- React + TypeScript + Vite + Tailwind CSS + shadcn/ui + lucide-react(パッケージ管理は pnpm)
src/app/App.tsx、src/app/components/src/styles/を5ファイルに分離(fonts.css/globals.css/index.css/tailwind.css/theme.css)guidelines/、ATTRIBUTIONS.md、default_shadcn_theme.css
スタイルを5つに分けているのが目を引きます。フォント、グローバル、テーマを別ファイルに切る構成は、デザインシステムを意識した作りです。他ツールはここまで分けていませんでした。
コード自体も、useMemo で計算をまとめ、端数モードを type RoundingMode = "none" | "up" | "down" と型で定義し、金額表示は toLocaleString("ja-JP") で日本語ロケール指定——という、ちゃんとしたものでした。
公開:.figma.site で公開できる
右上の「公開」から、数クリックで公開URLが手に入りました。課金設定などは不要です。
今回できたURLがこちら(実際に触れます)。
→ https://nature-light-20437169.figma.site
カスタムドメインの接続も用意されています。また「コミュニティで公開」という別トグルもあり、こちらはFigmaの公開ギャラリーに載せるものなので、用途が違います(今回はオフのまま)。
ひとつ気になったのは、URLが nature-light-20437169 という自動生成の文字列だったこと。ChatGPTサイトが warikan-calculator.… と内容に沿ったURLを作ったのと比べると、そのままでは人に見せにくいURLです。
正直な短所
- 遅い(約7分/v0の約4倍)
- URLが自動生成の無意味な文字列(カスタムドメインを繋げば解決はする)
- Figmaのアカウントとプランに乗るため、気軽に使い捨てる用途には重い
なお検証中、Figma内の埋め込みプレビュー上では端数モードの切り替えが反応しない場面がありました。ただし公開後のサイトでは3モードすべて正常に動作しています。プレビュー特有の挙動と判断し、不具合としては扱っていません。
結論:「速さ」を捨てて「仕上がり」を取るツール
6ツールを同じ課題で検証してきて、Figma Makeの立ち位置ははっきりしました。
| 評価 | |
|---|---|
| 速さ | ❌ 最遅クラス(約7分) |
| デザインの仕上がり | ⭐ 6ツール中トップ |
| 機能の厚み | ⭕ 3モード+クイック選択+内訳+合計 |
| 計算の正確さ | ⭕ 3モードすべて正確 |
| コードの質 | ⭕ React/TS/Viteの本格構成 |
| 公開のしやすさ | ⭕ 数クリック・課金設定不要 |
「デザイン会社のAIはデザインが上手いのか」への答えは、YES。しかも配色の話ではなく、情報設計のレベルで。
こんな人に向く
- 人に見せる前提のものを作りたい(提案、プロトタイプ、社内デモ)
- すでにFigmaを使っている
- 待てる——7分を「作り込みの時間」と思える人
向かないとき
- とにかく速く動くものが見たい → v0
- 今すぐ軽く試したいだけ → Gemini Canvasなどの手軽ティア
まとめ
- Figma Makeは約7分と最も遅いが、デザインの仕上がりは6ツール中トップ。
- 強さは配色ではなく情報設計——デバイス表示、Noto Sans JPの指定、金額の主従、そして内訳の「合計」行。
- 計算は3モードすべて正確(1万円÷3人で検算済み)。
- 中身はReact+TypeScript+Vite+Tailwind+shadcnの本格プロジェクトで、スタイルは5ファイルに分離。
.figma.siteで数クリック公開できる。ただしURLは自動生成の文字列。- 結論:速さを捨てて仕上がりを取るツール。
次に読む
- 開発ツール3つの横並び → AIアプリ開発ツール3つを実機比較(v0・ChatGPTサイト・AI Studio)
- 最速だったツール → v0(Vercel)で"文章だけ"アプリは作れる?
- 手軽に試したいなら → Gemini Canvasでアプリは作れる?実機検証
- 開発現場の定番対決 → Claude Code vs Cursor
