同じ仕様書を2つのAIに渡したら、いくら差がつくのか。Google Antigravityとv0で試しました。
題材は実際に必要だったもので、AIに作らせたWebアプリを公開する前のセルフチェックリストです。この日、自分のパソコンのダウンロードフォルダにFirebaseの秘密鍵ファイルが置きっぱなしになっているのを見つけたのが発端でした。人のことは言えません。
この記事の前提:筆者は React / Next.js / TypeScript で受託開発をしている現役エンジニアです。Antigravityは無料プラン、v0はPremiumプラン(月20ドル)に毎日付与されるデイリー枠2ドルの範囲で検証しました。金額はBilling画面の残高を各生成の前後で読み取った実測値です。
結論
| Antigravity | v0 | |
|---|---|---|
| 費用 | 0円 | 2.11ドル |
| 初回生成 | 約90秒 / 550行 | 3分11秒 / 532行 |
| 追加の改修1回 | 未実施 | 2分50秒 / +73 −29行 |
| 単一HTMLの制約 | 守った | 守った |
| 外部ライブラリ | 使わなかった | 使わなかった |
| 生成後の自己検証 | なし | あり |
速さでも安さでもAntigravityが勝ちました。ただ、v0だけがやっていたことが1つあって、そこが2.11ドルの中身だと思っています。
渡した仕様書は同一
まず仕様書を1本書き、両方に同じものを渡しました。7つの質問に答えると、公開前に確認すべき項目が重大度つきで出てくる、という内容です。
制約も揃えました。
ビルド不要でブラウザでそのまま開ける index.html(1ファイルにHTML・CSS・JSをまとめる)として実装してください。外部CDNやライブラリは使わず、素のHTML・CSS・JavaScriptだけで書いてください。
v0はReactとNext.jsが得意な道具なので、この制約は本来やりにくいはずです。それでも両方きちんと守りました。素のHTML1枚、外部参照ゼロ。ここで差はつきませんでした。
Antigravity:90秒、0円
生成物は550行。localStorageへの保存、印刷用のスタイル、コピー機能まで入っていて、指示した機能は全部ありました。
判定ロジックの中身も見ました。
{ id: 'api-hardcode', category: 'must',
title: 'コードにAPIキーを直書きしていないか',
desc: 'GitHub等で公開された瞬間に不正利用されるのを防ぐため',
condition: (a) => a.q5 === 'used' || a.q5 === 'unknown' },
「使った」だけでなく「わからない」も条件に含めているのが良かったところです。初心者は「わからない」を選びます。そこを安全側に倒すのは、言われなくてもやってほしい判断でした。
実際に最も危険な組み合わせ(誰でもアクセスできる・決済情報を扱う・APIキーを使った・データベースあり)を入れると、必須9件を含む13項目が出ました。中身も妥当です。
- コードにAPIキーを直書きしていないか
- .env ファイルが .gitignore に入っているか
- 公開するリポジトリにAPIキーが含まれていないか
- 自前でクレジットカード番号を保持していないか
- データベースの読み書きルールが全開放になっていないか
- 他人のIDでログインしたら他人のデータが見えない状態か
最後の項目は、認証(本人確認)と認可(アクセス権)を分けて考えないと出てきません。初心者向けツールの生成物としては、期待より一段上でした。
v0:3分11秒、0.97ドル
行数は532行。ほぼ同じ規模です。ただ、作業ログを見ると中身が違いました。
ブラウザ表示を確認済み
検証用に配置済み
操作と保存を検証済み
単一ファイルを検証済み
v0は生成したあと、自分でブラウザを開いて動かしていました。表示を確認し、フォームを操作し、localStorageへの保存と復元まで試してから「できました」と言ってくる。Antigravityはこれをやりません。書いて、終わりです。
3分11秒のうち、かなりの部分がこの自己検証だったはずです。遅いぶん、確かめてから出してくる。
2回目の改修で、デイリー枠を使い切った
v0にはもう1回投げました。実用性を上げるための3点です。
- 各項目に「確認方法」を1行足す(
sk-やAIzaで全文検索する、といった手を動かせる粒度で) - 「わからない」を選んだ項目を、専用の必須項目として立てる
- 必須が1つでも残っていたら「まだ公開しないでください」と最上部に出す
2分50秒で完了。ここでデイリー枠2ドルが尽き、月額枠から0.11ドルだけはみ出しました。
| 回 | 内容 | 所要 | 消費 |
|---|---|---|---|
| 1 | ゼロから生成 | 3分11秒 | 0.97ドル |
| 2 | 実用性の改修3点 | 2分50秒 | 1.14ドル |
| 合計 | 約6分 | 2.11ドル |
正直に書いておくこと
v0の生成物は、私の手元でハンズオンのテストができていません。プレビューが開かず、コードのダウンロードもブラウザ側にブロックされたためです。上の表でv0について書いているのは、行数・所要時間・消費額・作業ログという外形的な事実だけです。
Antigravityの生成物のほうは、実際に7つの質問を埋めて13項目が正しく出ることまで確認しています。この記事の中で、両者の出力品質を同じ深さで比べられてはいません。そこは差し引いて読んでください。
もうひとつ。検証の途中で私は一度「Antigravity版のサンプル投入が壊れている」と判断しましたが、あれは私の操作ミスでした。ブラウザの開発者ツールから change イベントを投げていたのに、アプリは input を購読していた、というだけの話です。localStorageに壊れた状態が残っていたのも重なりました。消して試し直したら、正常に動きました。AIの成果物を疑う前に、自分の測り方を疑うべきでした。
「自己検証なし」のツールを使うなら、何を自分で確認するか
ここで言う自己検証とは、AIがコードを書いた後に自分でブラウザを開いて動かし、表示や保存が正しくできているかまで確かめる工程のことです。v0はこれをやり、Antigravityはやりません。つまりAntigravityを選ぶ場合、自己検証の工程は必ず自分の作業になります。この記事の題材(公開前チェックリスト)のような単一HTMLアプリなら、最低限次の順番で確認してください。
- 生成されたHTMLファイルをブラウザで実際に開く(ダブルクリック、またはテキストエディタの「プレビュー」機能で開く)
- フォームに値を入力し、保存・送信などのボタンを一通り押す
- ブラウザの開発者ツール(F12キーまたは右クリック→「検証」)を開き、「Application」タブ→「Local Storage」で、入力した値が実際に保存されているか確認する
- ページをリロードし、保存した内容が消えずに復元されるか確認する
- 右クリック→「ページのソースを表示」で、APIキーらしき文字列(
sk-やAIzaで始まる文字列など)がコード中に直書きされていないか確認する
この手順を踏まないまま「動いているように見えたから」で公開すると、保存が実は機能していなかった、というケースに気づけません。自己検証をしないツールの出力を、見た目だけで合格にしないことが、このツールの使い方で一番やってはいけないことです。
どちらを選ぶかの判断基準
| 状況 | 選び方 |
|---|---|
| 仕様が完全に固まっている、かつ上記の確認手順を自分で踏む時間がある | Antigravityのような自己検証なしのツール+自分で確認 |
| 確認する時間や気力がない、工程を人に(AIに)代わってほしい | v0のように生成後に自分で動かして確かめるツール |
| 決済情報・個人情報を扱うなど、公開前チェックの項目数が多い | どちらを使っても、上記の確認手順を省略しない |
Antigravityが向く場面:仕様が固まっていて、あとは書くだけのとき。速くて、無料です。ただし出てきたものを自分で動かす工程は、必ず自分に残ります。
v0が向く場面:自分で検証する時間や気力がないとき。2.11ドルは、その代行料だと考えると納得できます。
私は結局、Antigravityで書かせて、自分で動かすを選びました。今回はそれで足りました。ただ、この判断は「自分で確かめられる」ことが前提です。確かめ方が分からないうちは、確かめてくれるほうにお金を払う意味があります。確認すべき項目そのものについては初心者がやりがちな失敗7つにもまとめています。
ツール全体の位置づけはAIコーディングツール主要5種の比較、Antigravity単体の評価は実機レビューにまとめています。
よくある質問
Q. AntigravityとV0、どちらが安いですか? A. Antigravityです。個人向けプランが0円で、今回の生成も無料枠の範囲で終わりました。v0は同じものを作るのに2.11ドルかかりました。
Q. どちらが速いですか? A. 今回はAntigravityが約90秒、v0が3分11秒でした。ただしv0は生成後に自分でブラウザを開いて動作確認までしており、その時間が含まれています。
Q. v0にHTML1枚で作らせることはできますか? A. できました。v0はReactやNext.jsが得意ですが、「外部ライブラリを使わず素のHTML・CSS・JavaScriptで」と指定したところ、そのとおりに書いてきました。
Q. AIが作ったものを公開する前に、何を確認すればいいですか? A. 最優先はAPIキーの流出です。コードへの直書き、.env の .gitignore 漏れ、公開リポジトリへの混入の3つを確認してください。他人の個人情報を扱うなら、本人以外が見られない状態かどうかも必須です。詳しくは初心者がやりがちな失敗7つにまとめています。
Q. Antigravityのように生成後に自己検証をしないツールを使う場合、最低限何を自分で確認すればいいですか? A. 本文の「『自己検証なし』のツールを使うなら、何を自分で確認するか」に挙げた5つの手順が最低限です。実際にブラウザで開いて操作し、開発者ツールで保存内容を確認し、ページのソースでAPIキーの直書きがないかまで見てから公開してください。「動いているように見える」だけでは、保存機能が実は動いていない場合に気づけません。
Q. v0のように自己検証ありのツールを使えば、自分でのチェックは不要になりますか? A. いいえ。AIによる自己検証は「表示できたか」「操作できたか」という外形的な確認にとどまることが多く、APIキーの流出や個人情報の扱いといった公開前チェックの項目まで網羅しているとは限りません。自己検証ありのツールでも、公開前の最終確認は自分の工程として残してください。
まとめ
- 同じ仕様書で、Antigravityは0円、v0は2.11ドル。速さもAntigravityが上だった。
- 制約(単一HTML・外部ライブラリなし)は両方とも守った。ここで差はつかない。
- 差が出たのは生成後の自己検証。v0は自分でブラウザを開いて確かめてから出してくる。
- ただし今回、v0の出力を手元で深くテストできていない。比較の深さは対等ではない。
- 私の側の測定ミスも1件あった。AIを疑う前に、測り方を疑うこと。

